矢沢光広(鎌倉彫)
“日常で使ってもらいたい”
職人の世界に入って既に50年以上が経つ。
職人として長年ものづくりに向き合ってこられた、人間としての深さを感じられる方。
器に向かうときの真剣な眼差しを忘れてしまうほど、普段は温厚で柔和な表情。
骨格が美しく、自然そのものが表れている縄文土器が大好き。
木や漆の本来持っている性質、自然そのものを生かした器をつくることを探求している。
古いものが大好き。古くなった漆は本当に美しい。
そう話す矢沢さんの器を古くなるまで使い続けたい。
「漆器作家・矢沢光広」
1946年 神奈川県生まれ
1972年 漆器作りを開始
鎌倉彫の枠にとらわれない作風が特徴。
こだわりは日常で使ってもらえる器をつくること。
「漆器を育てる」という感性を大切にしている。
インタビュー
職人歴と鎌倉彫に携わることになったきっかけを教えてください。
僕は鎌倉彫、ではないというか・・・(笑)
漆器作家といえばいいのかな。
父がやっていた工房で遊んでいたその延長にあるような感じだね。
二十歳からだから・・・51年になります。
作品に対するこだわりは?
『日常に使ってもらえる器』であり、木や漆の持ち味、本来持っている性質、自然そのものを生かした器を作りたいですね。
そして骨格が美しいこと。僕は縄文土器が大好きなんだけど、縄文時代は精霊が生きてたと言われているでしょう。
自然そのものが表れている、そんな「姿」「形」を見たいんだと思うし、自分の作品においてもそこに迫りたいですね。
矢沢さんにとって「自然」とは?
漆っていうと難しく構えられることが多いでしょう?
けれども僕にしてみれば漆も遊び道具の一つというか、ただの塗料じゃん(笑)
怒られちゃうかもしれないけれど、ピカピカであることにとらわれて、漆の持っている本来の可能性を狭めたくないんだよね。
僕は古いものが大好きでね。古くなった漆って本当に美しい。
時間の経過が美しく積み重なっている。
修理だらけでも使ってもらえるものでありたい、そう思っています。
作品をどんな方たちに、どんな風に受け取ってもらいたいでしょうか
心地よいと感じてもらえること、かな。
受け取る人もおんなじ波長で受け取ってもらえたら嬉しい。
自然と想いが伝わったりね。
より自由に作って、それがそのまま受け入れられて、心地よさが伝わることが一番嬉しいですね。
矢沢先生、ありがとうございました。
インタビュアー:鈴木心彩