こんにちは、アルヴォリの萩島です。
鎌倉彫協同組合の職人さんに、伝統工芸への想い、そして、新しい伝統工芸のカタチについて語って頂きました。
今回は飯笹信和先生のインタビューをご紹介致します。
聞き手は詩人の鈴木心彩(こいろ)さんにお願いさせて頂きました。
Q. 先生の職人歴と鎌倉彫に携わることになったきっかけを教えてください。
高校卒業してからなので33年目ですかね。
きっかけは父がろくろ師をしていて木地を納めていて、その中に鎌倉彫の木地があったんです。
当時は今よりずっとその業界も活気があって、漆塗り師が不足していたということと、彫る、削る、塗るということでより個性が深く出る鎌倉彫に魅力を感じて、携わるようになりました。
Q. 作品や製品に対するこだわりは?
末長く使ってもらえること。がまず第一ですね。
そして新しさ。あえて新しいことを取り入れてみたりチャレンジしています。
そこにある「酔いの器」は球体を半分にして作っているんですよ。ちょうどぴったり180cc、1合入るようにね。
漆の上に錫(すず)を蒔き付けてこの色を出しています。
お酒はもちろんだけど、ドレッシングなんかを入れたり、いろんな使い方ができると思う。
「漆ってこんなにいろんなことができるんだ」っていうことをもっと多くの人に知ってもらいたいですね。
Q. 漆ってどんな色が出せるんでしょうか
純白以外。それからパステルカラーは難しいけれども、それ以外なら。漆はもともと茶色なのですが、時間が経つと透明になっていくんです。
時々この色にしてください、と持ち込まれることがあるんですけど、経年変化を見据えて色を合わせます。
だから「もともとってこんな色でしたっけ?」と言われることもありますけどね(笑)
「時を楽しむ」のが漆の良さだと思うんですよ。
毎日使っているとなかなか変化に気がつかないと思うんですけどね。漆塗りは使われ方、時の流れで色の出方が変わるので、漆は生きていることを楽しんでいただけたらと思います。
Q. 今回の取組みへのメッセージをいただけますか
昔は一般の人たちが木地を買い、彫刻までやって、漆塗り師のところに持ち込み職人が漆を施す。テーブルとか家具だとか、漆塗りの個別オーダーをするのは当たり前のことだったんです。
今もお茶の先生はご存知だから「なつめ」を作ってくださいとかお願いされるんですけど、一般の方はおそらくほとんど知らないでしょう。
なので漆を施すということがそんな風にオーダーできるということ、もっと身近なんだということを知ってもらえるいいきっかけになったらと思っています。
Q. 鎌倉彫がどんな風に広がっていくことを思い描いていますか
今、鎌倉には海外の人がたくさん来てくださっていますからね。鎌倉独特の血、というのか、日本の文化としてうまくアピールしていきたいですね。
小学生が年に1回、鎌倉彫の箸を買っていく、そのくらい気軽に、身近になってほしいなと思います。
飯笹先生、ありがとうございました。
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聞き手あとがき
家族の一員となった器は、刻一刻とときを重ねて変わりゆく。
柔らかに重ねられていくその美しく静かなときの流れは、一つとして同じにならない「育む器」。
さじの先がテーブルにつかないスプーンは口当たりも優しく、先生の優しいお人柄そのもの。
一度使うと虜になります。
鎌倉彫との距離をより身近に、末永く使ってもらえることを願う、その優しい眼差しは、
伝統と鎌倉の未来を思う一途なこころが映っていました。
聞き手:鈴木心彩(こいろ)