こんにちは、アルヴォリの萩島です。
鎌倉彫の職人さんに、伝統工芸への想い、そして、新しい伝統工芸のカタチについて語って頂くシリーズ。
今回は矢沢光広先生のインタビューをご紹介致します。…
聞き手前回と同じくは詩人の鈴木心彩(こいろ)さんにお願いさせて頂きました。
Q. 先生の職人歴と鎌倉彫に携わることになったきっかけを教えてください
僕は鎌倉彫、ではないというか・・・(笑)
父さんがやっていた工房で遊んでいたのが始まりで、僕は、漆器作家といえばいいのかな。
大学中退して、二十歳からだから・・・51年になるね。
Q. 作品や製品に対するこだわりは?
『日常に使ってもらえる器』が出発点だね。
それでいて限りなく自然を生かしたい。
自然と遊ぶようにね。木と漆ってあたりが柔らかいでしょ。
それが性格的にあっているのかな、木の持ち味、漆の持ち味をねじ曲げず、本来持っている性質を生かしたいんだよね。
それから骨格が美しいこと。
縄文土器が大好きで、そりゃもうたくさん見にいったんだけど、縄文時代は精霊が生きてたと言われているでしょう。
土を最大限生かして、自然、感覚、情感というか、弥生時代にはない初々しさがある。
僕が縄文土器に魅せられているのはそういう自然そのものを表しているような、そんな「姿」「形」を見たいし自分の作品でもそこに迫りたいんだとおもう。
Q. 矢沢先生にとって「自然」とは?
漆っていうと難しく構えて捉えられることが多いでしょう?
けれども僕にしてみれば漆も遊び道具の一つというか、ただの塗料じゃん(笑)
こんなこというと怒られちゃうかもしれないけれど、ピカピカであることだけにとらわれて漆の持っている可能性を狭めたくない、といえばいいのかな。
僕は古いものが大好きでね。古くなった漆って本当に美しい。
時間の経過が美しく積み重なっている。
修理だらけでも使ってもらえるものでありたい、そう思ってるよ。
Q. 作品をどんな風に受け取ってもらいたいですか
何よりも心地よいと感じてもらえること、かな。
受け取る人もおんなじ波長で受け取ってもらえたら嬉しい。
自然と想いが伝わったりね。
より自由に作って、それがそのまま受け入れられたら嬉しいよ。
矢沢先生、ありがとうございました。
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聞き手あとがき
限りなく自然の佇まいを生かした器は、時の積みかさなりも美しい「時を纏う器」。
精霊の生きる初々しい縄文土器のように、先生自身もまさに精霊のように木や漆と
呼吸を合わせて作品を作り続けておられるのだろうと感じました。
心地よくて、手直ししながらでもずっと使い続けたくなる、先生の器にはきっと
自然が宿っているのでしょうね。
聞き手:鈴木心彩(こいろ)
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